島うたの最高峰が遺してくれたストリート・ライブの傑作!
2013年に亡くなった沖縄島唄の最高峰・登川誠仁の実質的なラスト・ライブ名演集。収録は島唄の祭典「コザ・てるりん祭」(沖縄市)2009年から11年までの舞台をまとめた。共演は、若手唄者のトップと注目される仲宗根創。強烈なスウィング感で圧倒されるオープニング「鳩間節」から、十八番「ナークニー」二題、八重山の名歌「とぅばらーま」まで、戦後島唄の土台を築き上げたせい小(せいぐわー)先生ならではのパワフルな唄三線が炸裂する。島唄の発信地・コザ発「TERURIN RECORD」記念すべき第一弾! 2017年作品
登川誠仁先生は、1932年、兵庫県に生まれている。小さなころから唄三線に熱中し、戦後の(第一期)島唄黄金時代から、最年少にもかかわらず数々の独創的改革を行ったことで知られる。沖縄芝居の歌・踊りから琉球古典音楽に至るまで熟達した人物であったことは語るまでもないが、米軍占領下の沖縄にあって、アメリカ文化の影響を受けた人でもあった。それは、カントリー&ウェスタンのヒットをナゾの口真似でこなしてみせたり、アメリカ式の新しい島唄バンドを結成したり、本アルバムでは英語がついて出たりといったことでも理解できる。2013年、長い病との闘いを終え80歳の天寿を全うされる。
先生の晩年のステージはどれも、歌詞を間違えようが何をしようが、「オレの好き勝手にやらせてもらうぜ!」という態度がはっきりと出て、見事なほどにカッコよかった。伝統的歌謡の最高峰が、ロックンローラーと同じようなエネルギッシュな精神を一番に持つ……誠仁先生は、そんな、ぼくらの憧れの存在だった。
藤田正(解説より一部抜粋)
1. 鳩間節~中作田
2. ナークニー~山原汀間当
3. ゆんたく
4. 新夢の沖縄島
5. ナークニー~はんた原
6. 石川かぞえ歌
7. ゆんたく
8. やっちゃー小~かいさーれー
9. とぅばらーま~六調節
登川誠仁 唄・三絃
仲宗根創 唄・三絃
+
前川守賢 太鼓・囃子
よなは徹 太鼓・囃子
プロデュース:照屋林次郎、藤田正
CD統括:藤田正、ひがよしひろ、神谷一義(ディスクアカバナー)
歌詞解説付
[試聴]
2. ナークニー~山原汀間当:
■ 商品説明
島唄の最高峰が遺してくれたストリート・ライブの傑作!2013年に亡くなった沖縄島唄の最高峰、登川誠仁のラスト・ライブ名演集。強烈なスウィング感で圧倒されるオープニング「鳩間節」から十八番「ナークニー」、八重山の名歌「とぅばらーま」まで戦後島唄の土台を築き上げたせい小(せいぐわー)先生ならではのパワフルな唄三線が炸裂する。島唄の発信地・コザ発「TERURIN RECORD」記念すべき第一弾!
■ 商品仕様
製品名 | せい小やいびーん コザ・てるりん祭ライブ / 登川誠仁 |
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型番 | TR-001 |
JANコード | 4571258157076 |
メーカー | ディスクアカバナー / てるりんレコード |
製造年 | 2017年 |
琉球歌謡の真髄、ここにあり!
登川誠仁師と言えば、「美ら弾き(ちゅらびき)」と称する華麗な撥捌きで有名ですが、唄三絃のみならず太鼓を叩かせても三板(さんば・琉球カスタネット)をさせても当代随一のオールラウンドプレイヤーでした。就中、琉球孤の島々につたわる民謡から古典音楽にまで精通し、琉球歌謡全般を換骨奪胎して独自の芸へと昇華したその類稀な傑出した芸風と渋い歌声は万人を魅了して、風狂の謡人・嘉手苅林昌と並ぶ伝説の唄者にまでその地位を押し上げたことをもってしても特筆に価するでしょう。また、登川師は数々の奇行でも知られていますが、その天衣無縫の憎めないキャラクターと相俟って「せい小(ぐわー)」あるいは「せい小先生」と呼称され多くの人々に尊敬され親しまれてきたのです。本作は登川誠仁の晩年のステージを集成したものです。ロケーションが野外、しかも路上でのライブイベントということもあり、その「天衣無縫」の唄いっぷりを思う存分遺憾なく発揮した好演となりました。登川師晩年の舞台はこのライブにかぎらず、どれも童子のような天衣無縫な精神が横溢したものでしたが、本作の演奏にかぎっては孫ほど年齢の異なる若手最有望株の仲宗根創を傍らに据え、いつになく真剣に自らの芸を披露しています。この相方の人選にも島うたの未来を託すべ後継の唄者たちに自身が辿ってきた険しい道のりと、島うたのこころを何としてでもつたえずにおくものかという燃え盛るような情熱と気魄が唄の行間からひしひしとつたわってくるようで鬼気迫ります。その登川師の熱き魂の叫びに応えるかのように、次世代実力No.1の座を競い合う前川守賢、よなは徹の二人が見事に太鼓と囃子で花を添えているのも聴きどころのひとつでしょう。リラックスした中にも襟を正したくなるような、おおらかで厳粛な唄の佇まい。不世出の名人・登川誠仁一世一代のベストパフォーマンスと呼ぶに相応しい内容となりました。いにしえからつたわる琉球諸芸を一身に凝縮した登川誠仁奇蹟の至芸をたっぷりご堪能くださいますよう。
2017.11.2 神谷一義(ディスクアカバナー)
MEMO せい小やいびーん 2018
本作は不世出の島うた名人・登川誠仁晩年の演奏を捉えた貴重な記録です。演奏はすべて、コザてるりん祭のものですが、このイベントは本作制作者・藤田正さん中心に地元の有志たちが運営する手作り野外コンサートです。唄の街・コザで2009年から始められたこのストリートライブに登川誠仁師は亡くなるまで毎年出演し、入魂の演奏をまるで形見のようにわたしたちに残してくれたのです。そのあらましは藤田正さんの解説(ここでは抜粋)に詳しくある通りです。ここであらためて強調しておきたいことは、このライブが地元・コザで行われたストリートライブであるという一点です。唄の合間に、あるいは演奏の最中にも観客(=コザ大衆)のざわめきが途切れなく強烈な熱気を伴って記録されており、ここがかつては暴動すら起きた一触即発の基地の町であり、島うたの発火点であったことをありありと想起させてくれます。これほど生々しい唄のありようを記録したライブ音源はこれまで皆無であったでしょう。本作を聴けば、大衆の中から「唄」がどう生まれ起ち上がったか、原初の風景が必ず浮かび上がってくるはず。ぜひご一聴を、と強力にお奨めしたい一枚です。 2018.1.18