八重山百哥撰 壱
誇(ふくい)八重山の祝のうた / 大工哲弘
いま、ぼくたちには大工哲弘の声が必要だ。
ずっとむかし、うたにはちからがあると信じられていた。
時代はどんどん暗く、重苦しくなっていくけど、うたのちからってほんとうにまだあるのかな?
大工の声には暗雲をふりはらう、陽のひかりのようなあかるさとかがやきがあるとおもうんだ。
だからいま、祝いうた。大工哲弘島うたアンソロジー「八重山百哥撰」第一弾。
八重山諸島に伝わる古今の島うたを百曲選んで集成するアンソロジー「八重山百哥撰」第一弾。本作はいにしえより八重山諸島に伝わる「祝い唄」を選んで収録した。大工のおおらかで伸びのある歌声は慶祝の詞を乗せて暗い時代の暗雲を振り払い、とおい未来へと運んでゆく。まさに万物を祝賀する生命の祭り、未来を言祝ぐ「歓喜の歌」だ。時代を超えて人とひとを、過去と未来をいまに繋ごうとする奇跡的創唱。1997年作品
1.目出度節
2.揚古見ぬ浦
3.繁昌節
4.赤またー
5.祝安里屋節
6.鷲ぬ鳥
7.高那節
8.赤馬節
9.鶴亀節
10.固み節
11.六調
12.目出度節(松竹梅)
[試聴]
4.赤またー:
■ 商品説明
八重山諸島に伝わる古今の島うたを百曲選んで集成するアンソロジー「八重山百哥撰」第一弾。本作はいにしえより八重山諸島に伝わる「祝い唄」を選んで収録した。大工のおおらかで伸びのある歌声は慶祝の詞を乗せて暗い時代の暗雲を振り払い、とおい未来へと運んでゆく。まさに万物を祝賀する生命の祭り、未来を言祝ぐ「歓喜の歌」だ。時代を超えて人とひとを、過去と未来をいまに繋ぐ奇跡的創唱。
■ 商品仕様
製品名 | 誇 ー八重山の祝のうた / 大工哲弘 |
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型番 | ASCD-2004 |
JANコード | 4571258154044 |
メーカー | ディスクアカバナー |
製造年 | 1997年 |
MEMO ディスクアカバナー 2018
ディスクアカバナーはプレオフノート、沖縄音楽専門レーベルだがその名が示す通り、節目節目に咲く花のような運動体だ。第一期は1991~92年のおよそ2年間。島うたの正嫡・知名定男を中心に据え、戦後世代に属する唄者の結集を目論んだ。当時は嘉手苅林昌も登川誠仁も照屋林助も健在だっただろう。自らの過酷な戦争体験を経て戦後島うたの確固たる礎を築いた島うたの巨人たちのことなら、叛骨のルポライター・竹中労が十全に紹介している。いまさらそこに一体、何を付け加えることができよう。オレたちは竹中労が焔のような集中力と熱量で為遂げたトータルな島うた〝理会〟から出立して、さらに遠くへ島うた、風と水の呂律を運ばねばならぬ。「竹中労のできなかったことをやる」というのが当時の気概だったけれども、それよりは途中で何もかも抛り出して遁げ去った不肖の弟子が抱く慚愧の念がより強かったのである。とまれ、間に合った。竹中労が逝く二ヶ月程前、わたしたちがはじめて制作した『IKAWU / ネーネーズ』『島うた / 知名定男』の二枚を末期の病床に臥す恩人の枕元に届けることができたのだから。わが南島謡人・大工哲弘との邂逅もまた、「竹中労別れの音楽会」前夜の浅草だった。いま、わたしは確信できる。そうだ、わたしたちが気付こうと気付くまいと、また、望むと望むまいと、あの頃すでに「島うた」の珠と玉、星と星を繋ぐ糸は強く結ばれ繋がれていたのだ、と。
それからおよそ5年の時を経て97年、ふたたび「アカバナー」咲く。その時点で知名定男との恊働は終っていたし、第一期・ディスクアカバナーの挫折と反省を総括するカタチで「オフノート」が94年に始まっていただろう。それでもディスクアカバナーの活動に固執したのは沖縄島うたへの未練というよりは、生涯の友とも恃む友人二人との出会いを果せたからにほかならぬ。桜沢有理(B/Cレコード主宰)と上地一也(ライブハウス groove オーナー)、この二人がわたしの両腕となり、両脚となってさらなる「島うた」の深みへとわたしを連れ出してくれたのである。この第二期アカバナーで最も印象深かったのは山里勇吉・大工哲弘・大島保勝の八重山歌謡の依鉢を継ぐ三世代をブリッジし「アカバナー」の旗の下に結集できたことである。それぞれ二周り、祖父と父と子ほども齢の異なる三人の唄者の間を幾度も往復して疲弊もしたが得るものも大きかっただろう。いまでもわたしの胸中には仲間とと共に奔走した労苦の数々が佳き思い出となって走馬灯のように蘇っては駆け廻る。
さて、2018年現在。八重山謡の巨星・山里勇吉師が逝去し、大島保勝が永いインターバルを余儀なくされているいま、大工哲弘一人孤塁を守る。これからの島うたの転回はこの不世出の謡人を軸に廻り、編成されていくにちがいない。それが島うた運動の現在をめぐる客観的情勢である。そして、わたしたちの次なる任務は、さらにもういっぺん、いや何度でも、時代と世代を繋ぐ島うた運動戦線を再編成し、同時代音楽の発信基地を再構築することにあるのだとおもっている。
2018.3.2 神谷一義(ディスクアカバナー)