MISORA RECORDS / ONDO NOW 1
カストリオンド 石若艶尽くし / 初音家石若
KASUTORI ONDO ERO! GRO!? 9SENSE!!! / HATSUNEYA ISHIWAKA
音頭専門レーベル、新生「ONDO NOW!!!」ついに始動。
音頭の新しい地平を切り拓くふたつのコラボレーション。
記念すべきミソラレコード・プレゼンツ「ONDO NOW」第一弾!
初音家石若、1939年生まれ。河内音頭老舗会派・初音家の重鎮にして現役バリバリの音頭取り。黒人ブルースマンばりにエレキギター小脇に弾き語り歌うワン&オンリーの至芸。枕の美味しいところばかりを軽妙な語り口に乗せて聴かせる絶品音頭と、エロチックでナンセンスな破れ唄&戯れ唄。カワチの香りが芬々と匂いたつ融通無碍な歌藝の魅力をフルコースでたっぷりと堪能させててくれる必笑必殺にして鱈腹の一枚。
サポート陣は現代河内音頭の老舗会派・初音家社中はじめ、浪花が誇る日本一のチンドン集団・ちんどん通信社、さらにわがオフノートがもっとも信頼する腕利き精鋭たちの全面参加を得て天晴な快演〈怪演?〉となった。そう、このノリ、このリズム。音頭・チンドン・ノンカテゴライズ(他の音楽)の異種音楽三結合によるあらたなオンド・シンジケートが叩き出す、浪花大衆藝能最深部の鼓動をつたえる極上のグルーヴはこの国の従来の音楽ではけっしてあらわしえなかったものと確信を持って断言しておこう。
さては一座の皆様方よ。飄々と語る〝ギターをもった音頭取り〟初音家石若師の音頭の妙味、戯れ唄の粋をこのアルバムで心ゆくまでご堪能くださいますよう七重の膝を八重に折り、伏して懇願奉る次第なり。
監修:澤田隆治、初音家秀若 2012年作品
「ONDO NOW」とは?
カワチ発世界音楽、オンドの新たな地平を目指して。
「ONDO NOW」はミソラレコードに進駐したカワチのオンドを世界へ向けて発信する河内&江州音頭の専門レーベルです。音頭の〝いま〟現在をリアルつたえる本編〈ONDO NOW〉と伝説の音頭名人たちの超貴重音源を集めたアンソロジー〈音頭の巨人たち ONDO COLOSSUS〉のふたつのシリーズを車の両輪にしてオンドの新たな地平を目指して飽くなき前進を開始してまいります。
1.ひざまくら石若節 8分41秒
2.松々尽くし~無法松の一生 15分34秒
3.ゴルフわからない節 6分33秒
4.わからない節 へそあなづくし [エロ編] 4分16秒
5.わからない節 へそあなくずし [グロ編] 3分58秒
6.わからない節 へそしたくどき [ナンセンス編] 6分35秒
7.山々尽くし~会津の小鉄 8分47秒
初音家石若 音頭、唄、ギター
初音家秀若 太鼓
林幸治郎(ちんどん通信社) トランペット、チンドン、ゴロス、囃子
小林信之介(ちんどん通信社) クラリネット、囃子
ジャージ川口(ちんどん通信社) バンジョー、囃子
中尾勘二 テナーサックス、スネアドラム
川下直広 テナーサックス
関島岳郎 チューバ、トロンボーン、カシオトーン、口琴
向島ゆり子 ヴァイオリン
華乃家福人 アコーディオン
吉田悠樹 二胡、フラットマンドリン
船戸博史 コントラバス
久下惠生 ドラムス
初音家歌月 囃子
初音家邦子 囃子
初音家悠月 囃子
下村よう子 囃子
中西レモン 囃子
全28頁豪華ブックレット(全歌詞/メモワール/解説)付
監修:澤田隆治、初音家秀若
[試聴]
1.ひざまくら石若節(フェイドアウト)
■ 商品説明
ミソラレコード・プレゼンツ「ONDO NOW」第一弾!初音家石若。河内音頭・初音家の重鎮にして現役バリバリの音頭取り。ブルースマンばりにエレキギター小脇に弾き語り歌うワン&オンリーの至芸。枕の美味しいところばかりを軽妙な語り口に乗せて聴かせる絶品音頭とエロチックでナンセンスな破れ唄&戯れ唄。融通無碍な歌藝の魅力をフルコースでたっぷり堪能させててくれる必笑必殺、鱈腹の一枚。
■ 商品仕様
製品名 | カストリオンド 石若艶尽くし / 初音家石若 |
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型番 | MRON-3001 |
JANコード | 4571258160014 |
メーカー | ミソラレコード / オンドナウ |
過去と未来を繋ぐ「いま」を刻むリズム――「ONDO NOW」発足に寄せて
大阪・河内地方において江戸後期・明治以降にさかんにはじめられ、時代の息吹を吸収しながら現在に至るまで新しく生まれ逞しく変わりつづける河内の音頭。ご承知のように河内音頭は大阪河内地方に伝承される盆踊り唄である。大まかに河内音頭の発展と変遷の軌跡を辿れば、江戸期あるいはそれ以前に河内地方の村々ではじめられ、明治期には近江・滋賀の江州音頭の流入に刺戟され競合しながらその姿を整え、大正期に入ると現代河内音頭の父・初音家太三郎の創意工夫により河内音頭は劇的に変化する。太三郎は巷間大流行していた浪花節の節調と演題を大きく採り入れて「語りもの」としてのスタイルを確立した。さらに終戦後には進駐軍がもたらしたジャズのリズムをも貪欲に呑み込み「現代音楽」として生まれ変わる。そして、1961年、河内音頭最大のスター、鉄砲光三郎の『民謡鉄砲節』の全国的大ヒットにより遍く世間の所有に帰したのである。その後も数多の人材を輩出し、各会派が競合しながら発展しつづけて今日に到るも、現在は音頭にとって冬の季節、退潮期と言っていいだろう。この二〇年あまりの間で音頭を取り巻く環境はドラスティックなまでに変貌してしまった…。いま、音頭の再生は可能か。
いにしえより庶民語り部たちが河内の風土とくらしのなかで紡ぎ出した豊穣な記憶の堆積〈モノガタリ〉。人々の心を片時も捉えて離さず、生命の奥噴から湧出し、魂を奥底から揺さぶり奮い起たせて止まない強靱な波動〈リズム〉。身体のなかで繰り広げられる継続と変化を繰り返しながら跳躍する生の弁証法〈ドラマツルギー〉。バラッドにしてダンスミュージック、自らに課せられたアンビバレンスを瞬時に止揚して大衆を熱狂の坩堝に誘い、ついにはエクスタシー(脱自)の極みへとさらってゆく離れ業。そこにこそ河内の音頭のレーゾンデートルはある。庶民大衆の粒々辛苦が築いた心の財産。祖先たちがぼくたちに遺してくれたこの大いなる文化の遺産をけして散財してはならない。
がしかし、いま。ぼくたちの時計の針は価値転倒が世界規模で刻一刻と同時進行する「転型期」の時間を指し示している。ものみなうつろいやすく、誰にとっても生きることが困難な時代。ぼくたちはいったい、どこに向かって、なにを頼みに歩いていいけばいいのか。
「ONDO NOW」だからこそいま。音頭に聞こう。音頭が裡に孕んだものがたり交響、溢れかえる声の記憶と脈拍つ生命の躍動の方へ思いきり我が身を委ね、自身の魂をしたたかにぶつけてみるのだ。その行為のなかにこそ現在の苦境を軽々と乗り越えてゆける逞しい生命力が全身に漲り、昨日の不安を今日の希望に換え、明日を易々と切り拓きゆく叡智が滾々と無限に沸き上がってくるはずだ。したたかさとしなやかさこそを。
さて、ぼくたちは祖先から受け継いだ大きな遺産「音頭」をぼくたちだけではなく未だ見ぬ友人やこどもたちにどのようにして届けたらいいのだろう。そのためにぼくたちはなにをなすべきなのか…。
まずは歴史に学ぶこと。そうだ、ぼくたちは音頭が辿ってきた道程をもう一度辿り直してみよう。音頭の歴史のなかで大きな役割を担いながら忘却の淵へ置き去りにされたままの音頭名人たちとそのまわりを取り囲むようにして弾むながら揺れる大衆。無数の魂たちを夢魔の彼方から再び喚び醒まし、その「歌声」と「喚声」が指し示す方へと耳を傾けてみるのだ。遙か遠く微かに浮かぶ「初原の風景」、その先にぼくたちが目指すべき「藝能の桃源」はきっとある。ぼくたちは「声の記憶」を克明にルポルタージュする、その作業を貫徹することで、先を征くものとして未来とこれから出遇うだろう友だちへの約束を十全に果たすことができるだろう。
そして世代を超えて唄が繋がらないいま。日々の現実をひたすら堪えながらしたたかに生き抜こうとする音頭取りたちの悪銭苦闘に精一杯のエールを贈ろう。そのためのささやかな一助になるよう、これまでにあまり機会がなかった北・中・南河内地域の音頭間の文化&人間交流を実現して、それぞれのもつ地域性・歴史性に深く想いをいたす「学びの場」を恒常的に築いてゆこう。オンドと成り立ちが酷似する世界音楽・サンバに倣って言えば「エスコラージ・オンド(音頭学舎)」。ぼくたちは音頭を通して先人たちの智慧を現在に活かし未来へ繋ぐ「共生と自立」の契機と方途とを現実の地平にかならず勝ち取ってゆく覚悟である。その学習と演習のカリキュラムのなかで音頭に内在する高度な音楽&物語性、さらに舞踊資源としての大きな可能性をあらためて再発見できるにちがいない。ぼくたちはきっと、先人たちの伝統と遺産の上にさらに創意と工夫を加え意匠を凝らした、真に「オレたちによるオレたちのオンド」を創造することができるだろう。
そういまこそ、カワチ発「世界音楽」。この音頭を取り囲むあらゆる束縛から音頭自身を解き放ち、過去と未来を繋ぐ「いま」を刻むリズムへと転生させる「オンド・ルネサンス」運動の時機なのだ。ぼくたちは信じている。その過程にひたすら奮迅することこそ、カワチのオンドをして「世界音楽」へと飛翔させるたったひとつの道筋なのだ、と。
2012年11月19日 ONDO NOW 神谷一義