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記忘記 note/off note 2020-04-12


思念と苦海のモノガタリ(ノンキナトウサン篇)

今朝『サンデーモーニング』(TBS)司会・関口宏氏が「(コロナ感染拡大に対して)街ではまったく意識が薄いみたいですね」と軽口を叩くように言うのを聞いて呆れた(巷に渦巻く不安と怨嗟の声が聞こえないのか!)。芋が煮えたもご存知なく、テレビという公器を通してあさってのことを平然と曰う無神経ぶりは軽率を通り越して『ノンキナトウサン』そのものだ。「のんきな父さんお馬の稽古/お馬が走り始めて止らない/子供は面白そうに 父さんどこへ行く/くどこへ行くんだか お馬に聞いとくれ/ヘヘのんきだね」。時節柄もちろん、「お馬」を「コロナ」に替えていただいて結構だが(細部はご随意に)、メディア最前線にいて、この鈍感ぶりは最早犯罪的ではあるまいか。どうやら日々スタジオの無菌箱の中で過ごし、玉石混交の「メイクニュース」や日の丸印の「官製情報」ばかり取り扱っているせいで感覚がだらしなく磨耗してしまったらしい。いままさに起こりつつある「事実」のなかに息づく身体性(生活者の実感とか活社会の複雑さ)を捨象して「像」へと変換してしまうのがメデイアの手癖だとしても、この「非常時」に生きられ・死につつある個別人間の実像に迫り得ないのだとしたら、情報はついに「制度」でしかなく、メディアは体制の付属品(大勢支配装置)であると断じざるをえない。一人ひとりの「暮らし」真摯な日常の営みはけっして観念のお遊戯なんかではないのだから。このあと、スポーツ解説の張本勲氏が「(いま起きていることは)人類とウィルスの戦争」と語り、薄暗い刹那の想念(軽い殺意)からすこしだけ救われた。さすが往年の名打者、数々の勝負を制し、身体を張って力ずくで掴み取った言葉には説得力がある。一つの番組の中で「観念」(というか気分)と「身体」の綱引きをみせられるのはーーステレオタイプに切り縮められた二項対立の図式化がニュース・バラエティのお定まりのルーティーンだとしてもーー「現在」における迷惑であり、わたしたち「大衆」にとっての不幸である。いまこそ鬱屈した日常の軋轢を止揚するべく、思念の漁場に闘魚を放ち、錯綜する「情報」(という名の気分や官僚的作文)の漁網を食い破り、この苦海を鱗で呼吸しながら全力で泳ぎきらねばならぬ。 2020.4.12

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